現在開催中の調布シネマフェスティバルの企画の中で「調布特撮大作戦2025」を実施しています。
調布には特撮関連の制作会社も多く、特撮の街でもあります。「ゴジラ −1.0」の制作をした白組のスタジオも。
今回は、長年、特撮の美術造形を手掛けてきた故・村瀬継蔵さんの追悼上映会、トークショーへ行ってきました。
《追悼・村瀬継蔵『カミノフデ』上映会& トークショー》
左から、若狭新一さん、三池敏夫さん、原口智生さん
©2024 映画「カミノフデ」製作委員会
この映画で総監督を務めた村瀬継蔵とは、何者か?
1958年の東宝特技課に入社し、円谷英二組に参加。
その後、「ゴジラ」「ガメラ」「大魔神」シリーズをはじめ、数多くの造形を手掛け、現在の怪獣造形の礎を作ったレジェンドなのです。エキスプロダクション(調布市、造形制作会社)の設立に参加。日本アカデミー賞協会特別賞も受賞。
残念ながら、昨年秋にご逝去されました。(享年89歳)
今回の追悼上映作品『カミノフデ』は、1970年代に香港の会社から依頼され、村瀬氏本人が書き留めていた極秘プロット(あらすじ、構想)を基に作られたものです。
屈指のクリエイターたちが集結し、着ぐるみ、ミニチュアによるアナログ特撮で表現しつつ、特撮作品に縁のある豪華キャスト(斎藤工、佐野史郎、釈由美子、樋口真嗣監督等)も参加。
村瀬氏は、亡くなる前に完成を見届けることができました。
上映後のトークショーは、村瀬氏の造形DNAを受け継いだ若狭新一さん(造形師)、三池敏夫さん(特撮美術監督)、原口智生さん(造型師・アニメ特撮アーカイブ機構修復師)のお三方が参加。司会は島崎淳さん(メイキング制作)。
特撮ファンならば垂涎ものの人たちです。(以降、敬称略)
若狭「(村瀬さんとの関わりをと司会者に聞かれて)話すと長いですよ。」
とユーモアを交えて話しだし、会場を和ませてくれました。
日本の造形美術の基礎を築いたのは村瀬さんで、今でもその弟子筋が活躍しているとのこと。
三池「東宝から独立し、その後、制作プロダクションに参加。日本の各社に技術が伝わり、競い合ったものを進歩させていくという流れを作った大元は村瀬さん。村瀬さんは、日本の特撮史の中で非常に大きな存在だ。」
原口「村瀬のパパ(幼少時から東宝撮影所に出入りしていたので親しみを込めてこう呼んでいた)は、三池さんも言っていたが新素材の開発や導入に熱心で、アイディアマンだった。」
若狭「先輩から聞いた村瀬さんの昔の仕事ぶりは『とにかく厳しかった。助手さんが作ったものでも仕上げが気に入らないと全部壊して、自分で作り直していた。』。」
晩年には、アニメ特撮アーカイブ機構で開催している子供たち向けのワークショップ指導にも参加してくれ、子供たちの造形物にも容赦なくダメ出しを出していたとか。
時間が足りなくなるくらい、たくさんのエピソードと村瀬愛が溢れていました。
最後にひとことづつ。
若狭「会場のみなさんと、村瀬さんへの想いを共有できたと思います。ありがとうございました。」
三池「この作品のテーマは『技術の伝承』。
私と原口さんはATAC(アニメ特撮アーカイブ機構)で活動しているので、村瀬さん、先輩たちが築いてきた技術を末長く残したいと活動しています。皆さん、今後ともご協力ご理解をよろしくお願いいたします。」
原口「村瀬さんをはじめ、円谷英二さんの元で制作作業をしていた偉大な大先輩たちのおかげで、今の自分達がある。生きているうちに映画が完成したのは良かったと思います。」
デジタル全盛の現代。
アナログ特撮の技術は、非常に貴重なものになってしまいました。
お三方には、直接レジェンドと接した世代として、次世代へ技術を伝えていって欲しいと切に思いました。
※ ATAC(アニメ特撮アーカイブ機構)
https://atac.or.jp
活動に関して、詳細を知りたい方は、どうぞご覧ください。
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(矢ヶ崎)
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映画のまち調布 シネマフェスティバルは3月2日まで開催しています。
詳しいスケジュールはこちらをご覧ください。
https://chofucinemafestival.com/schedule/